28歳無職弱者男性の日記

29歳になりました

【紹介】絶望を演ずる

十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない――アーサー・C・クラーク

 

1ヶ月に1回以上必ず見るドラマがある。

基本的に俺は今物語と距離を置いているので、できれば小説とか映画とか、ゲームであっても物語性があるものに触れたくない。

それでも定期的に見たくなるのが、イギリスのテレビドラマシリーズである『ブラック・ミラー』だ。

日本からはNetflixで視聴可能である。

 

ブラック・ミラーは各回1時間のテレビドラマで、一話完結型のSF作品。

全編通してある程度の設定は共有しているが、どれから見始めても大丈夫。

SF版の世にも奇妙な物語といえばわかりやすい。

俺が必ず見返したくなるのが、シーズン2の『ホワイト・クリスマス』という回。

 

あらすじ ネタバレ注意

主人公はCookieと呼ばれる製品の設定を行っているエンジニア兼販売員。

Cookieとはわかりやすく言えば人格の外部記憶装置で、自分の人格を丸々データとして保存しておけるものだ。

主人公はそのCookieを卵型の端末に保存して、スマートホームなどの管理AIとして紐づける仕事を行っている。

データになった自分は初めから自分のことをデータとして認識しているわけではない。

だから仕事として、自分が人間ではないこと、データとしての役割を果たさない場合どうなるかということを調教するのが主人公の役割だ。

必然的にCookieとの関わりが増え、その扱いを熟知していく。

 

冬の山小屋で、主人公ともう一人の男はふたりきりで立ち往生している。

何らかの仕事でそこにいるらしいが、具体的なことは明かされない。

長いあいだふたりきりで過ごしていたというが、打ち解けている気配はまったくなく、むしろドラマが始まったあたりからようやく会話し始めたといった感じ。

 

「どうしてこんなところに来るハメになったのか話してくれ」と主人公が尋ねる。

男が乗り気でないのを察し、主人公が自らの境遇を話しはじめる。

仕事柄人間の心理に詳しくなり、ネットで恋愛アドバイザーの副業をしていたこと。

副業中に罪を犯したこと。

その話術に惹かれ、男はだんだんと述懐を始める。

 

恋人と幸せに暮らしていた男だったが、妊娠をきっかけに亀裂が生じる。

ある日の喧嘩を堺に男は「ブロック」され、恋人の顔と声を認識できなくなってしまった。

当然解除を要求するが受け入れられず、4年の月日が経った。

その間、恋人も新しい命も「ブロック」されている男からは認識できない。

自分の子供の性別もわからない状態で、4年間影から見守ることしかできない男。

恋人の事故死をきっかけにブロックが解除され、ニュース映像から顔が認識できるようになったと気づく。

 

男は居ても立っても居られずに、自分の子供が住んでいる恋人の実家に向かう。

ブロックが解除されている今ならば、子供の顔も認識できる。

クリスマス当日のことだった。

しかし実家にいたのは、明らかに混血の、人種の違う女児だった。

なぜ妊娠をきっかけに喧嘩となり、ブロックされたのかを悟る男。

そこにやってきた恋人の父親と取っ組み合いになり、殺害してしまう。

男はそのまま逃亡する。

残された女児は倒れたおじいちゃんにクリスマスプレゼントを渡し、助けを呼びにひとり外に出る。

雪山を、徒歩で、何も持たずに。

 

そこまで自白させたところで、主人公が喜びの声をあげる。

「奴を自白させたら釈放だろ?」

主人公が行っていたのはCookieへの尋問であり、恋人について語った男は現実世界では勾留中の参考人だった。

Cookieが自白したことで男は逮捕された。

エピローグで刑事が自白したCookieの時間間隔を弄くり、恋人の祖父を殺害したクリスマス当日を、1分を1000年に感じる設定で繰り返すようにする。

雪が積もる山小屋で、ラジオからは『Christmas Every Day』が流れている。

youtu.be

男がラジオを床に叩きつける。

一層大きくなる音楽。

再びラジオを叩きつける。

今や音楽は大音量となり、男は耳をふさぐしかできない。

そしてエンディングを迎える。

 

名も知らぬ俳優の怪演

レイフ・スポールという役者の演技が素晴らしい。

俺自身、このドラマはYou Tubeでネタバレを見てから視聴したが、それでも楽しめた。

イギリス人の根性は本当に腐りきっていて感動ものだと思う。

善良な男がクリスマスに罪を犯してしまい、心底反省して自白した直後にその日を永久に繰り返させ、Christmas Every Dayを聞かせ続けるなんて誰が思いつく?

しかも劇中の曲は子供向け番組のラジオ放送っぽいんだよ。

自分のせいで子供まで死んでいるのに、その子供が聞くはずだったクリスマスの楽しい感じを一生聞かされる。

エンディング間際、レイフ・スポール演じる男が絶望のあまり叫ぶ。

この叫び声がちょっと他では見たことがない。

 

このドラマを知る前は、fate/zeroの間桐雁夜の叫び声を愉悦にしていたのだが、(声優には申し訳ないが)比べ物にならないほどレイフ・スポールの叫び声がイイ。

Netflixに登録している人は、全部見なくてもいいから『ブラック・ミラー』で検索して1時間10分40秒から見てほしい。

ちょうど1分を1000年に感じる設定ONにした場面がそこで、叫んでエンディングに入るから。

なんで俺こんなに歪んだんだろうな。

このドラマシリーズ、基本的にはハッピーエンドにならないから好きな人はぜひ。

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