28歳無職弱者男性の日記

29歳になりました

飲んでから飲むようになってしまった話

昔東京で飲んでいた頃、歳上の大人たちがいつも言っていたことがある。

「帰ってから飲み直す」

家に着いたら何をするのかという会話になると、毎度「飲み直す」と答えていたダンディなおじさんがいた。

酒が強い奴が偉いという価値観で育ってきた世代だから、見栄を張っていたのかもしれない。

しかし実際に、そのおじさんが酒を飲んで酔っているところを見たことがなかった。

 

一方で俺はというと、お開きの雰囲気になる頃にはすでに2、3回吐いていた。

酒が好きだと言い張って歳上にノコノコ着いていき、奢ってもらっている身分で酒を吐くというのは失礼な話である。

だから酔っ払っても必死で平静を装ったし、もはや黙って座っていることすらままならなくなってもウンウンと相手の話に相槌を打つことだけは忘れなかった。

もちろん吐くときはトイレでだ。

 

ある日、横浜中華街で飲んだあと、スターダストという店で飲み、野毛の三杯屋に流れたと桜木町の居酒屋で飲むという頭がおかしくなる一日を過ごしたことがあった。

当時も変わらず俺は馬鹿だったから、「いやぁすでに飲んできちゃいましたよ」と格好つけるために一杯ひっかけてからその会に臨んだ。

「さすが若いねえ!」とおだてられてはじめは気持ちよくなっていたが、まず中華街で吐いた。

移動に時間がかかったのでスターダストは難なくこなした。

三杯屋で3回吐いた。

 

後で知ったのだが、三杯屋というのは飲兵衛の中では有名な店だったらしい。

俺が行ったときには女将さんが高齢となっており、近所の大学生が文化維持のために手伝いに来ているという状況だった。

コップに並々注がれた菊正宗の熱燗と、納豆、謎の魚の鍋が肴だった。

この世で最も嫌いなもののひとつが納豆だから、それには手を付けなかった。

 

限界をとうに超えている中で飲む熱燗は地獄である。

胃にガツンと響いている感じが一口ごと襲ってくる。

前後不覚となっていたのでよく覚えていないが、3杯しか飲めない店で3回吐いたということは1杯で1回吐いたのだろう。

とにかく何がなんだかわからない勢いで吐いた。

 

その後訪れた桜木町の居酒屋では、胃の内容物をすべて出しきっていたおかげで全力で飲みかつ食えた。

先程まで顔面蒼白で息を荒くしていた男が、終電間際の居酒屋でナポリタンとビールをガバガバやっていたのだから、周りの大人たちも呆れたに違いない。

 

今、外で飲む機会があったときに、俺は帰る途中ひとり「酒を買いに行く」と言ってコンビニに向かう。

あるいは何も言わず帰ってから家で飲み直す。

ふと昔を思い出したが、俺も大人になったとは思わなかった。

 

飲んだあとにはアロエを食え

飲みすぎたとき、俺が飲むのはシリマリンとビタミンCだ。

たとえ朝から晩まで飲んだとしても、ペース配分さえ意識していれば二日酔いになることはない。

実体験と科学的根拠にもとづいてこのふたつを信用しているのだが、ふと昔の人はどうやって飲みすぎ対策をしていたのかと気になって調べてみた。

 

どうやらアロエを食っていたらしい。

食うというのは文字通りの意味で、トゲトゲの部分を削ぎ落として皮ごと齧るのが一般的な方法。

当然苦味が口いっぱいに広がるが、2,3日続けると気にならなくなるという。

 

どうしても苦味に慣れない人は、乾燥させてすりつぶし粉にして飲む人もいたという。

まさしくお婆ちゃんの知恵というやつである。

腹痛にも効果があるらしく、酒を飲まない未成年でも病弱な人は小さいときからアロエを齧らされていたらしい。

確かに昔は俺の家の庭にもアロエが植えてあった。

アロエは寒さに弱いとのことで、玄関にも鉢植えが置いてありアロエが埋まっていた。

 

祖母はそれを湿布代わりに尻などに貼り付けていたのを覚えている。

万能薬アロエは今でも花屋で売っているらしい。

ちょうど今日腹を壊したから、買ってきて齧ってみようかしら。