オレが鬱でして
過去に1度だけ鬱になったことがある。
鬱は再発率が高く、重症化してしまうと自分の足で病院に行くのが難しい。
俺にはツレもパートナーも理解ある彼くんもいないから、鬱になった場合自分でなんとかするしかない。
鬱病のコミュニティを覗いてみると、多くが自身の経験を赤裸々に語っていて感心する。
思い出すだけで苦しいはずなのに、過去を清算することで前に進もうとしている。
俺にはできなかったことである。
鬱と一言でいってもいろいろと段階があるらしい。
人によって体験談に差があるのはそのためだ。
薬でも治らない場合もあるし、彼くんで治るときもある。
感情すら湧かなくなるという人もいるそうだ。
俺の場合は感情が残っていた気がする。
一番ひどいときは、他の人と同じようにベッドから一歩も出られずに一日過ごしていた。
食事も摂らなかったと思う。
ただボーッと天井を眺めていて、その間特に何かを考えているというわけではなかったが、理由もなく涙が出てくるのだ。
「悪い悪い、ごめん、俺が悪かったから泣くなよ」と脳内で自分を慰め続ける。
すると涙は一層勢い増して流れ出す。
ひとしきり泣くと疲れたのか眠りに落ちる。
しばらくして目を醒まし再び泣くという繰り返しだった。
最終的に酒を飲むことで過去と感情を切り離し寛解に至った。
5年ほど良くなったり悪くなったりを行き来していたと思う。
体験を人に話すということについて
鬱について、カウンセリングやグループセラピーで人に話したことはない。
親しい人にも過去については伏せている。
小学校からの同級生などは言わずとも察している部分があるとは思うが、今更あの時期の話をすることはない。
古くからの友人に、学生時代鬱病になり精神科を受診し、適応障害の診断を受けた人がいる。
彼は大学こそ卒業できたものの、新卒で就職した会社を使用期間でクビになり、以降障害者手帳を取得して年金で暮らしている。
正直うまくやったな、と思う。
支給額が2ヶ月で14、5万だと言っていたから、贅沢をしなければ一生食べていけるだろう。
もしかしたら日本は理解ある国くんなのかもしれない。
重度の鬱病期間中、世界はセピア色になっている。
たとえ症状が治まったとしても、世界の色が元通りになることはない。
どこか前よりも色が薄くなった世界で生きていかなければならない。
どうせ苦しい世の中ならば、何かに依存して気を紛らすのは正攻法である。
酒でも煙草でもゲームでもいい。
ただし人間関係に依存するのはどうかと思う。
実際友達が鬱になりかけたとき、自分の経験から助けになるだろうと親身に話を聞いていたことがあるが、共倒れになりかけたので距離を置くことになった。
もちろん黙って離れたのではなく、事実を伝え大人しく病院に行くよう言った。
こちらが何もしてないのに、笑って近づいて来る者は馬鹿か詐欺師だという。
心の穴は自分でしか埋められない。
他人には難しいからこそ、カウンセラーや精神科医といったプロが存在している。
下手なところに救いを求めて後悔しないようにしましょう。