28歳無職弱者男性の日記

29歳になりました

ひきこもり 猫 友達

 

長らくひきこもっていると、昔の夢をよく見る。

調べてみると案外同じ症状に悩んでいる人が多いらしい。

曰く大学受験の夢。

自分の番号だけがなくて、必死に探すのだという。

あるいは大学の単位を落とす夢。

 

俺が見るのは「もう1週間も学校に行っていないが、今日だけは行かなければならない。しかし行きたくないと悩んでいる夢」だ。

目が醒めてから数秒は心臓が高鳴っており、しばらくして安堵する。

もう学校に行かなくていいのだと。

 

特に理由もなかったが、学校には行きたくなかった。

中学、高校、専門学校とすべて同じだ。

毎日同じ時間に起き、同じ場所に赴いて強制的に時間を過ごす。

その致命的なまでの浪費がどうしようもなく苦手だった。

 

規律に従っているだけで1日が過ぎるのだからいいじゃないかと思うだろうか。

無職となった今、座っているだけで夜がくる。

明日が自動的に来て、時間感覚のないままに来週となり来月がやってくる。

 

それでいいと言ってほしい。

あなたたちは何の疑問もなくその環境に身を置けていたのだから。

大切なものが過ぎ去っていくことに耐えられない

去年飼い猫が死んだ。

5歳だった。

食事を摂らなくなり、おかしいなと思い病院に連れて行ったときには遅かった。

持って3日だと言われ、何の処置もなく帰ってきた猫は、次の日に姿を消した。

 

俺は無職で1日中家にいたから、猫が行きそうな場所をすべて探した。

近所の林にも分け入って捜索したが、どこにもいない。

諦めて家に戻り、ふと自分の机の下を見るとそこにうずくまっているのを発見した。

写真を撮ってあるが見せられない。

 

明らかに死に瀕している表情が、「もう放っておいてくれ」と語っていた。

夕方、隠れ潜んでいた場所から猫が這い出してきた。

廊下で倒れ、一瞬けたたましい鳴き声をあげた。

その姿を直視できず、俺はパソコンに向かっていた。

 

「猫が死に際に大きく鳴くのは、死後肺にたまった空気が抜けるためであり、苦しんでいるからではありません。鳴いたときには死亡しています」

Googleがそう言っていた。

 

俺なんかよりもよっぽどよく生きた猫は、俺なんかよりもずっと早く死んだ。

俺が死ねばよかったのにと思った。

猫を葬式に出した日、俺は自棄酒の影響で最後まで立ち会えなかった。

骨壷は庭に埋めた。

 

友達が死んだ

専門学校時代によく飲んでいた友達がいる。

専門の同級生の弟で、歳は俺と同じだった。

彼は中卒で働いておらず、ある日実家を追い出され兄である友達の家に転がり込んできたのだ。

 

絵を描くのが好きなやつだった。

当時俺も芸術家を気取っていたから、知ったような口を聞きとにかくスケッチブックを肌身離さず持って描きまくれとアドバイスした。

 

家にいるだけだとインプットができないから外に出ろと言って無理矢理に働かせた。

100円ローソンで働き出した彼がパワハラに遭っていると言ってきた際は、すぐに辞めろと勝手なことを言って辞めさせたりした。

酒が弱い奴だったけれど、街に連れ出して頻繁に飲んでいた。

真っ赤な顔をして社会に不満を言う彼の言葉は、たしかに本心だった。

 

俺が田舎に出戻ってからは音信不通が続いていた。

それが去年兄から連絡が来て、自殺したと告げられた。

母親を殴り精神病院に入院していたのだが、脱走し他県の側溝に沈んでいるのが見つかったのだという。

俺が死ぬことで彼が救われるのならば、俺が死ぬべきだった。

そうではなかったのだろう。どうにもならなかったのだろう。どうしようもなかったのだろう。

 

3日前、亡くなった彼の兄から連絡があった。

俺に相談があるのだという。

20日に聞くことになったが、無職に相談とは何だろう。

俺はもう大事なものを失いたくない。