男子厨房に入らずの信念を守れたのは25歳まで
今日は遅番で、明日は余裕をもって出勤できる日だった。
施設の夕食はチーズオムレツで、帰ってからそれを作ろうと思った。
近頃卵が値上がりしているという。
一人暮らしの人には分からないだろうが、こどおじにとって、家にある食材はタダである。
職場で「家で料理をする」という話をした。
4,50代の奥様方からは大変驚かれた。
俺が実家ぐらしであることは伝えてあるため、「実家にいるんでしょ? お母さん具合悪いの?」「うちの旦那はカップラーメンも作れないよ」という反応だった。
あなたの旦那が今29歳だったら間違いなく結婚できないでしょうね、と俺は思った。
その旦那が超絶イケメンか年収1300万円くらいあれば話は別だが、田舎にいて奥さんも正社員で働かざるをえない以上それはないだろう。
会議や残業などで帰りが遅くなるとき、奥様方は必ず帰り際に電話している。
家にではない。
出前をとっているのだ。
「私がいないとご飯も食べないから」と彼女らは言う。
ああ時代、なるほど時代、おお時代。
世の男どもは自分の飯くらい自分で作れよ。
トロツキーは『ロシア革命史』の中で家庭の外注について書いている。
ロシア人の女性は優秀すぎて、雑草と屑肉で見事な料理を作り上げ男たちに食わせていた。
家の畑で野菜を作り、家畜を育て、足りないものは近所と交渉して用意していたのだ。
それは経済活動ではない。
まずは家庭料理を潰した。
外食文化を根付かせ、食事は家で作るものではなく、出来上がったものを買うのが当たり前とした。
すると雇用が生まれ賃金が発生し経済活動となる。
次に洗濯、掃除、修理修繕と進めようとしたようだが、うまくいかずソ連が崩壊した。
どこかのタイミングで「いや、自分でやるよもう」となったのだろう。
自分でやってしまうとそれはGDPにならない。
賃金が発生しない仕事には雇用が生まれない。
川で洗濯をされると洗濯機が売れず、洗濯機を作る企業が潰れる。
職場まで歩かれると車が売れず、車を売る企業が潰れる。
すると国際競争力が低下する。
日本がこれから再び経済成長するためには、自分で料理ができず、洗濯ができず、歩けず、何もできない人間が増える必要があるのだ。
きのことチーズのオムレツ
トップ画像はAIが描いたオムレツである。
俺は今日家に帰ってから、きのことチーズのオムレツを作った。
ついでにウインナーを4本焼いた。
俺はオムレツを焼くときに、ゴードン・ラムゼイみたいにして焼いた。
仕事帰りだったから、ゴードン・ラムゼイみたいに常に息切れした風だったし、何か卵に恨みがあるみたいに荒く混ぜて、塩は入れずにコショウのみで味付けをした。
村上春樹の小説では、こういうオムレツを食ったあと馬鹿の一つ覚えのようにりんごを齧る。
現実では俺にりんごを剥いてくれたのはお婆ちゃんだけだった。
そんなお婆ちゃんも5年位前に死んでしまった。
俺はどうするべきだったのだろうか?
今日スマホが壊れた。
昨夜死んだ猫の夢を見た。
ひたすら顔を舐められて、痛い痛いと言いながら笑みを浮かべる夢だった。
俺はどうするべきだったのだろうか?
ゴードン・ラムゼイは雑にかき混ぜるが、そうするとテフロン加工のフライパンは傷つく。