多動の派遣社員キレた!
派遣がキレた!
職場に典型的な多動の派遣社員がいる。
落ち着きがなく常に動き回っているが、目についたことをやって回っているだけであり、本来その時間に何の業務をするのかわかっていない。
わからないことを質問するのだが、返答を途中で遮って間違ったことをし始める。
しばらくすると戻ってきて同じ質問をする。
行動、動作、思考をすべて声に出す。
敬語が使えない。人の名前を覚えられない。ひとつのことをやっていると、他のことが完全に目に入らなくなる(だからコールが鳴っても行けない)
遅刻癖はないが、過去それで苦労したことがわかる。
おそらく学習の結果、絶対に遅刻にならない時間に出勤することで対応している。
だから必ず始業の1時間前にはいる。指示されていない早出なのでサービス労働となるが。
教科書的な症状のオンパレードだが、それが発達障害的なものだと理解している人は本人を含めいない。
「私大雑把だからね!」
「私頭おかしいのかな。私って頭おかしい?」
とは本人の言である。
当然何をやっても怒られるのだが、それに対しては「はい! すみません! ごめんなさい!」と大声で3度ほど繰り返す。叱責中の言葉を遮ってだ。
彼女がこれまでの人生で身につけた「怒られたときに被害を最小限にする方法」がそれなのだと痛いほどわかる。
なるほど凄い剣幕で謝ってくるやつがいたら、「うん、じゃあ次から気をつけて」と言うしかない。
しかし、場当たり的な対応で乗り切れるほど人生は甘くない。
同じ待遇で雇われている他の派遣社員からは不満が続出していた。
直接目にしたことはないが、裏で〝いじめ〟のようなことも行われていたのだろう。
とうとう昨日多動の派遣社員がブチギレて、「みんな私をバカにしている!」と怒り狂って暴れ出した。
その場にいた他の職員は、俺含め唖然として見守るしかできなかった。
よくいる生きづらい人
ネットでよくいる生きづらい人の例がこれだと思った。
たいていは本人視点のみの体験談となるから、同僚がその人をどう観察し評価しているのかがわからない。
控えめにいって、その人は仕事ができない。
介護とはチームで人の命を預かる仕事である。
ミスがあれば事故につながる恐れがある。その人がミスをすることで利用者に危険が及んだ場合、その人だけでなく一緒に仕事をしていた人にも責任が発生する。
とくにペアで仕事をする人には、業務の他にその人がきちんと仕事をしているかを確認することと、その人に的確な指示を出す仕事をしなければならない。
正社員が夜勤要因に駆り出されている以上、日勤帯の業務は派遣同士でペアを組んで回さざるを得ないという状況。
今回のいじめの背景にはそうした要因がある。
いわゆる「多動ちゃん係」をやらされていた派遣社員が、溜まりに溜まった鬱憤を本人にぶちまけた結果、「私ばっかり責められてる!」となったのだ。
結局、仲を取り持ったのは当日のケアリーダーだった。
両者から話を聞いたうえで喧嘩両成敗。
教科書的な対応だけれども、単なる現場責任者にメンタルケア的な対策がとれるはずもなく、当事者同士には大きな溝が残ったまま見た目上は解決とした。
ケアリーダーは「疲れた」と言い、その日の夜は飲みに行くことになった。
そこで俺から「多動」や「ADHD」を知っているか尋ねると、聞いたことがないと返ってきた。
どれだけ典型的な症状が現れていても、知らない人からしたら「性格がおかしい人」「頭が悪い人」に映ってしまうのだろうと実感した。