上は何してるんだという話
反省の虫と化したはずの俺は鬼と化した
ゴールデンウイークも始まった直前の頃、上司から外部業者との連絡の不備をどうにかするよう言われた俺。
当然そんなことは俺の専門外の話だし、業者の連絡先すら知らない。
そもそも一般介護員が外部の業者と直接やり取りできる介護施設などこの世に存在しない。
そういった業務は事務方が行うからだ。
連休中事務員は出勤してこない。
つまり「やれ」と言われた業務が宙ぶらりんのまま連休が過ぎていった。
当然連休中は業者も休みだろうから、仮に連絡先を知ったところでどうしようもない。
しかし俺は思いついた。
業者を介さない代替案を見つければいいのでは?
つまり自分でやるということである。
何のことかピンと来ていない人が大半だろうから説明すると、要するに車椅子の修理の話である。
連休前に車椅子の修理を依頼したが、返答がないまま連休に入り、修理に出した車椅子がいつ返ってくるのかわからない状況にあった。
「わからないじゃ困るんだよ」と上司にせっつかれた。
専門業者がわからないものを俺がわかるはずがない。
だから代わりの品を見繕って提出すれば問題ないと判断した。
そこでひとつ壁にぶち当たった。
自分で見繕うのはいいとして、その業務にあたる時間が確保されていない。
そもそもが人員不足の中でのゴールデンウイーク。当然日勤帯は雑務をこなすだけで精一杯で、その他のことをやる余裕などない。
その間も毎日2時間パソコンの前に座って業務日報を打っているケアリーダーを目の当たりにしてとうとうキレたのがこの記事だ。
この記事は酔っ払っていて内容を覚えていないが(今も酔っ払っているが)具体的に俺が何の業務でキャパオーバーになっているかは書かなかったはずだ。
実際は施設相談員がやるような業務を任されて、どうしようもない中であがいていた。
この日俺はサービス残業をした。
施設の倉庫を漁ったり、予備の車椅子を点検したりしてどうにか「上司の指示通りの車椅子」を用意した。
時刻はとうに定時を過ぎて夜勤帯の時間に差し掛かっている。
「ガワだけ整えたのであとは試すだけ試してください。◯◯さんから改善案をと言われている通りに用意した内容がこれなので、自分が明日夜勤で出勤したときに試した内容を聞いてどうするのか上に伝えます」と引き継いで帰路についた。
そして帰宅後キレ散らかした記事を書き、翌日反省の虫と化したのである。
そして夜勤に向かうと、すべての業務は俺が勝手にやったことになっていた。
フォローのつもりか知らないが、「勝手にやるのは構わないが、せめて報告してくれ」と釘を刺された。
俺が行った業務は、上司からまっすぐ下に実行までの部分。
行わなかったのが点線部分の報告業務だ。
上司から指示を受けた時点でそれは業務命令なのではないだろうか。
指示を受けた側がその他の上役や他部署への連絡役を兼ねるという事態は、他の仕事ではありえるのだろうか。
頭の中で疑問符が踊った。
報連相は社会人の基本だと理解してはいる。
しかし部署間、役職燗の連携はそれ相応の役職についている者の役割ではないだろうか。
今日は大してキレてない
「お前がやれと言うならすべてやるけれども、じゃあお前は何すんのよ」と思い、今日の夜勤中すべてをぶちまけた。
相方は60代男性と50代女性。
「そう、その通り」と全肯定してもらえたので、あまり腹は立っていない。
「君も上に行ったらああなるから。みんなああなった。人ってそういうもんだから」と60代男性は言った。「普通どんな小さな事業所でも現場監督が一番働くのが当たり前だからね。そうじゃないと下のモンが言うを聞くわけがない。小さい工場だと社長が一番汗流してるよ」とも言っていた。
上に行けば行くほどふんぞり返っていられるのは介護ならではだという。
結局10時間くらい愚痴を言い合って夜勤を終えた。
そこそこ過酷な夜勤内容だったけれども、言いたいことを言いたいだけ言ったのでスッキリしている。
朝になって、リーダーに「ちょっと」と呼び出された。
夕方に飲み会があるから出ろという。
行かなければならない。
だからそれまで一寝入りする。