28歳無職弱者男性の日記

29歳になりました

他人のイライラに無関心だと虐待するらしい

身体拘束についての動画を見た

点滴を引きちぎったり暴れて手のつけられない患者がいた場合、病院では身体拘束をする。

介護施設でも正当な手続きを踏めばできるのだが、暴れている状態を何週間か観察し記録をつけ、看護師、医者、家族に見せる用にフォーマットを整えて話し合いに望み、全員が同意し必要書類がすべて整ったら身体拘束が可能となる。

現場責任者は判を押したがらない。自分の成績に関わるからだ。

施設責任者は判を押したがらない。施設の評判に関わるからだ。

看護師は話を聞く気がない。身体拘束は悪いことであると教科書で習ったからだ。

家族は怒る。お母さんお父さんが暴れていることを信じられないからだ。

 

つまり実質介護施設において身体拘束はできないことになっている。

ちなみに医師の判断に基づき精神薬を大量に飲ませて廃人を作ることは「身体拘束」に該当しないので、看護師が被害を被るレベルの暴れ具合になると、問答無用で精神科医が召喚される。

しかし最近では、精神薬を飲みすぎてすべての薬に耐性を持ってしまったスーパー老人が病院を追い出されて来るケースが増えているという。

「これ精神科案件だろ……」と思ってもなぜか入院しないケースは、病院ネットワークでブラックリスト入りしている可能性が高い。

もしくは医者の方でも精神薬を飲ませすぎるのはよくないと反省したのかもしれない。

 

何はともあれ厚生労働省では身体拘束を虐待と定義している。

我々は車に乗るときにシートベルトをする。

車椅子にも転落を防ぐためのベルトがある。

アメリカで介護、看護の資格を取るときには、介護ベルトの使い方を学ぶという。

日本では虐待に定義されるので使用できない。

老人には車椅子から落ちる自由があるからである。

日本の介護施設における虐待の件数は増加傾向にある。

現場とお上の認識がズレているせいもあると思うが、上は上で一応は虐待を減らそうと努力しているようだ。

介護保険法で理念を伝え、高齢者虐待防止法で破ったら違法だと脅し、虐待が見つかったら介護報酬を減らすという形で賃金も人質にとった。

それでも虐待は減らない。

 

虐待に至る前段階として「不適切ケア」なる概念が作られた。

確か今までは「ちょっと待って」とか「あとにして」とか言うのをスピーチロックと呼び、身体拘束にあたると定義していた気がする。

現場からの声が届いたのか、はたまた統計マジックをやりたかったのかは分からないが、おそらく今後は「不適切ケア」の区分に移行するのだと思う。

そうすると数字の上では身体拘束が減るので、みんなうれしい。

我が施設の現状について

昨日の夜勤中、先輩とこの動画の話になった。

「不適切ケア」の領域はとても広いので、俺が働いている施設でも普通に行われていることがある。

「ご飯ならさっき食べたでしょ」「トイレならさっき行ったでしょ」「ここは寝るところじゃないでしょ」はすべてNGだが、普通にやっている。

俺は前から「スピーチロックなのでは?」と思っていたが、先輩にはその自覚がなかったらしく、動画を見てショックを受けていた。

そこで不適切ケアを減らすにはどうすればいいかの話になったのだが、夜勤中の午前3時にそんな話を振られても満足に頭が回らない。

どうせ「意識を高く持つ」とかいう精神論に落ち着くのだろうな、と思いつつ黙って聞いていると、意外にも人員基準の見直しという言葉が出てきた。

不適切ケアの宝庫である我が施設の人がいる部類にあたる日の現状はこんな感じである。

3人が3方向に分かれてそれぞれ介助にあたっている。

他に5人出勤者がいるが、入浴介助にあたっているので別室にいる。

人がいない日はこれが職員2名になるので、下部の利用者は放置でコーヒーなどやらない。

目を離すと転ぶ人も放置。

この状況で「ちょっと待ってください」をやめろと国は言う。

コンビニでも忙しいときは「少々お待ち下さい」と言われるのに。

ここに1名でも余剰人員が加われば、不適切ケアが減らせると先輩は言った。

フォローのために動き回れる人がいるだけで、その場を離れて利用者のニーズに応えられる。

その通りだが、お上は納得しないだろうなと思った。

職員を増やすということはつまり金をかけるということである。

現場でどれだけ訴えても、人員を増やせという要望は「介護士どもが楽をしようとしている」に変換され聞き入れられない。

悪性感情の大小

俺から見ると、私生活が充実していそうに見える人ほど仕事中にイライラしている。

認知症の老人に話が通じないのは小学生でもわかる。

さらに加齢により耳が遠くなっているので、まともなコミュニケーションは一切とれないといっていい。

彼女らはそういう状態にあるからこそ、日常動作に問題が生じ施設に入所している。

外で生きられるなら外で生きている。

 

自立支援を盾に要介護4、5の人に対して「自分でやれ」「なんでできない」と言うのはもはや暴力である。

上手くできなかったり、遅かったりするのを見ていて「イライラする」のであれば介護の仕事は向いていない。

しかしこの他人が抱えている問題に無関心であることも、不適切ケアが生まれる要因だという。

俺は俺より幸福な人のメンタルケアまでしなければならないのだろうか。

 

余談だが利用者の性別をすべて女性表記にしたのには理由がある。

その土地の行政によって違うだろうが、俺の街では基本的に男は施設に入れない。

70歳前後で脳にクリティカルダメージを負って、一瞬で「立てない・歩けない・喋れない」状態になり、運がいい(コネがある)と入所できる。

その前に電話で相談しても、「歩けなくなったらまた申請してください」と普通に言われる。

本来は違法だが、やり方はあるもんだ。

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