不眠とは長い付き合いだった
本来ならばすでに布団へ入っていなければならない時間だが、まだ起きている。
眠剤なら飲んだ。しっかり朝から起きているので、眠くならないほうがおかしい。
夕方に酒も飲んだ。しかし眠れない。
昔からこうだった。
アルバイトなどでも出勤の前日は必ず眠れない。
午前3、4時頃まで布団の中で寝返りを打ったり、トイレに起きたりを繰り返す。
明け方にようやくウトウトしだし、2時間程度しか睡眠をとれずに出かけることになる。
朝には必ず腹を壊す。
寝ていないから具合が悪くなる。
高校生のときには立ちくらみがしてバスの中で倒れたことがある。
そのときには病院に行ったが、自律神経失調症と起立性調節障害だと言われた。
それから10年まともにはなれなかったあたり、もう少しちゃんと診てもらっておいたほうがよかったかもしれない。
眠れないので独自ドメインの設定などをして過ごしている。
認識されるまでにしばらくかかるらしい。
夜更かしをする癖がついたのは中学生の頃、インターネットに出会ってからだ。
当時は別に夜でなければ見れないコンテンツもなかったし、夜な夜な掲示板やチャットに書き込むということもしていなかった。
MMOに触れる以前から、深夜までネットをする習慣ができていた。
全盛期は過ぎていたと思うが、フラッシュ文化が生きていたのでそれを見ていた。
狂ったようにやわらか戦車を見ていた気がする。
ある日製作者がNHKに出演していて、何を語っていたのかは覚えていないけれど、自分が触れているコンテンツがテレビで取り上げられている光景はすごいものを見ているという感覚に拍車をかけた。
それからMMOに出会った。
あの時代はMMOで人生を潰した人も多かった。
俺が青春を捧げたのはテイルズウィーバーだ。
ゲームがやりたかったので部活動には一切行かず、ダッシュで帰宅しゲームを起動。
夕方から夜までひたすらレベル上げを続ける。
午後9時を過ぎるてゲームをしていると親に怒られたので、一旦寝たふりをして11時くらいに起きて深夜までやる。
親がなかなか寝ないときには、午前2時に起きてやっていることもあった。
そんな生活を続けているとまともな社会生活が送れなくなってくる。
学校で具合が悪くなると、早退してそのままゲームをプレイした。
もっとマシなことに時間を使えばよかったとは思わない。
楽しい時間を過ごしたからこそ、今最底辺の境遇に堕ちているのは対価なのだと受け入れられる。
MMO廃人と化していたときの俺は、とにかく早く働きたいと思っていたことを思い出した。
自分の金で好きなだけ課金がしたかったからだ。
その結果高校生時代はバイト代の9万円をすべて課金に使っていた。
人間何歳になっても生きる動機は大して変わらない。
金を使う対象が変わるだけだ。
「そろそろ落ちるわ」と言えば、「乙」と返ってきた日々は過ぎ去った。
いや、明日から「お疲れ様でした」と言う日々が始まるのか。