月曜日を楽しむのは無職の特権なのに
珍しく早く起きたのと、今日は花粉がおだやかだったので外出することにした。
外に出るといっても特に目的地があるわけではない。
桜を見に行こうかとも思ったが、親に聞くとまだ咲いていないと言われたのでやめにした。とにかく遠くに行こうと思った。
上の写真は道中撮ったものだが、我が県は見ての通り四方を山で囲まれている。
書いて思ったが、我が県に限らず日本中たいてい山に囲まれた立地に街がある。
20歳くらいまでは、とにかくこの景色が嫌いだった。
右を見ても左を見ても山があることの圧迫感から逃げ出したくて、東京に行こうと決意した。
厳密には関東平野も山に囲まれているのだが、とりあえず視界内に山はない。
最初のうち、高層ビル群やマンション群を感動して見ていた俺だったが、ふとあることに気がついた。
見渡せば数千、数万の建造物があるが、おそらく死ぬまでにどの建物にも入らないだろうと。
そう思うと急に冷めてきた。
例えば大都市を舞台にしたオープンワールドゲームがあったとする。
自分の生活圏である一本道にある建物にしか入れず、たった数人の人物としか会話できないとしたらどうだろう。
明らかに手抜きである。
山は行こうと思えば行ける。
今までは背景に貼り付けてあるテクスチャに過ぎない思っていた山の魅力に気づいた瞬間だった。
愛車に乗り土手をゆく。
一応土手はサイクリングロードと名付けられていて、それなりに整備してある。
しかし純粋なロードバイクがこの道を走っているところを見たことがない。
道に細かい石が散乱していてパンクするからだと思う。
サイクリングロードが終わると普通の道路となり、行こうと思えばどこへでも行ける。
今日はどこまで走ろうかと漕いでいると、すれ違う人の多さに気づいた。
「今日は平日だよな?」と辺りを見回す。
すでに定年を迎えたであろう爺さん婆さんが土手を散歩しているが、その数が異様である。
前に来たときには1kmに1人すれ違うかどうかだったが、今日は100mに数人は歩いたり走ったりしている。
明らかに若い(といっても40代くらい)二人組のランナーを見かけたとき、確信した。
これ世間は休みだ。
帰ってきてTwitterを開いてみると、明日が祝日だから今日は休みだと書いてあった。
明日が祝日なら明日休め。
土手で立ち止まって、山を見渡した。
無限にどこまでも続いている。
まっすぐ、ひたすらまっすぐに歩き続け、進めなくなったらそこで死ぬのも悪くない。
ただし熊に食われたり、蛇に噛まれたり、崖から落ちて死ぬのは嫌だ。